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海外教育レポート

2009年10月15日

第22回 くすりの学校教育 海外レポート ~オーストラリア~

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行政が率先し、教育・研究機関をリード
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二


オーストラリアでは1960年代から青少年によるドラッグ類の乱用による被害をどのように予防することができるかとの観点から、学校での広義の意味でのくすり教育の必要性が認識され始め、1970年になってオーストラリアで初めての全国規模のドラッグ教育プログラムが導入された。その結果、1990年代半ば頃からドラック教育のレベルが飛躍的に向上したが、その間にいろいろなプロジェクトが提唱され実行されてはいたものの、その結果得られた貴重な経験などがあまり集積、評価されていなかった。
従って、全国レベルではあまり成果が上がらず、くすり教育に関するエビデンスのある総合教育の成果を得ることができなかった。


国家戦略として総額約5千万ドルを投入


 このような状況を反映して、オーストラリアのくすり教育は行政的な観点からオーストラリア政府の教育・雇用担当省(DEEWR)が1999-2000年と2007-2008年にかけて「学校におけるドラッグ教育国家戦略」(NSDES)と名付けて総額約5千万ドルの予算を投じて学校におけるくすり教育が実施された。この予算はオーストラリアの全学校を対象にしたくすり教育を実施するに必要な諸経費にあてられ、効率的なくすり教育ならびにドラッグによる健康阻害を予防することを目的としている。この「戦略」では国家的な教育の枠組みとして、くすり教育を通してドラッグによる被害を予防すること、そして学校内でのドラッグ起因の事故が起きた時に速やかに対応すること、の2点に重点が置かれている。これらくすり教育を実施するにあたり「柔軟的な教育・くすり情報」(REDI)が作成され、小学校上級生、中学校初級生、中学校上級生、教師ならびに教育関係者向けのくすり教育試案、学校教育者向けのホームページにビデオ、CD、そのほか関連資料を提供している。例えば、「学校におけるドラッグ教育ガイドライン」(Principles for school drug education)は以下のように12条から成り、これらの条目は4つの分野に区分されている。



学校教育にとらわれない様々な資料を作成


 このように、このガイドラインは単に学校内での教育ということだけではなく、家庭をも含めた社会環境の影響も十分に考慮されているのが特徴である。なお、この「ガイドライン」に基づいて作成されたビデオならびにその中でのテキスト全文はこちらで見ることができる。この他にもDEEWRからは実に様々な資料が作成され公表されており、ビデオやCDなども豊富に作成されている。例えば、大麻関係のパンフレット「大麻使用とその結果」(Cannabis and Consequences, 140頁)では大麻の歴史からはじまって、大麻に関する最新の知識、現実の問題点、大麻とたばことの対比、教室内での教育プラン、教育用ビデオ,父兄への質疑応答集など極めて多岐にわたる内容が盛り込まれて作成されていて極めて参考になる。
このパンフレットは1996年に初めて作成され、以降少しずつ改定され、全国の学校に配布されている。


(大きい画像はこちらをクリックしてください)


いくつかの国立機関が協力して教育プログラムを設定


 一方、国立ドラッグ調査研究所(NDRI)が薬物乱用予防を目的として1986年に設立されている。そして1999年にはカティン技術大学の認定研究所に指定されている。この研究所と姉妹関係にあるのが、国立ドラッグ・アルコール研究センター(NDARC)、国立アディクション矯正教育センター(NCETA)であり、お互いに協力しながら教育プログラムなどを設定している。この研究所はWHOのアルコール・ドラッグ乱用予防共同センターの役割も兼ねている。この研究所の活動内容は毎年年報として公開され、さらに昨年2007年には「学校でのアルコール・ドラッグ関連教育」についての報告書が刊行されているが、その中で引用されている「ドラッグ並びにアルコール・レビュー」誌の特集号(Drug & AlcoholReview Vol.26, No.6)は2007年末に発行され、特集号として学校でのドラッグ、アルコール使用予防教育をどのようにするかとの見地から、理論ならびに経験例が記載されている。
 このようにオーストラリアでは行政がイニシアティブをとって学校でのくすり教育に関与しているのが大きな特徴となっている。また、その結果いろいろな刊行物、メディア関連製品なども豊富に作成されているのも大きな特徴である。

いかがでしたか? 今回で、海外レポートの連載は終了となります。読者のみなさま、長い間どうもありがとうございました!

なお、こんなことを載せて欲しい、などのご要望がありましたらどうぞ以下のお問い合わせよりお寄せください。検討させて頂きます。


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