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海外教育レポート

2009年6月15日

第18回 くすりの学校教育 海外レポート ~フィンランド その2(前半)~

フィンランドシリーズその2、今回は生徒の立場からくすりの対する理解度を調査した例を取り上げています。

くすり教育にさいしては、くすりへの理解度を生徒の年齢層別に
正しく把握することが必要(前半)
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二


 小学生、中学生などへのくすり教育の必要性は大人の立場からの考えであり、その必要性、認識などはいずれも教育する立場にある大人たちの考えに基づいてなされているのが一般的である。
くすり教育の必要性の議論には、多くの場合、くすり教育を受ける側の生徒たちのくすりに対する考え、認識度などを調査してから教育プランを計画し実施するという例はあまり発表されていな
く、また関心が薄いようである。前号ではフィンランドの生徒たちのピクトグラムの理解度を紹介したが、その理解度の高さと同時に、生徒の年齢に応じてその理解度がどのように変わっていくかを見る調査手法にも注目されたのではなかろうか。似たような調査を日本でも実施して比較してみるのも意味があるかもしれない。実はそのフィンランドで生徒の立場からのくすりに対する理解度を調査した結果が発表されている。一般的に言って、くすりの使用に関しては小学生は病気の存在と関連してネガティブな印象をもっているのが普通であり、また実際にくすりの服用に際し、くすりの知識はほとんどなく、与えられるままに服用しているのが普通である。


年齢層別の調査


 この調査ではフィンランドの1学年(7-8才、23人)、4学年(10-11才、39人)、7学年(13-14才、19人)の年齢層の生徒を対象にし、主として病気とくすりとの関連性についての理解度をイン
タビューとグループ・ディスカッションを通じて調査したものである(Focus group discussion method)。 このグループ・ディスカッションはアンケート調査とか一対一のQ&A方式の調査よりも
いろいろと予想し得ない場面での討論がなされたりして、きわめて効果の高い調査方法であるとされている。なお、この調査は自発的に参加を申し出た生徒の中から、比較的穏やかで、かつまた
自分の意見を容易に表現できる傾向のある生徒が選ばれた。
 生徒たちの疾患に対する語彙としての知識は、年齢が上に行くに従いその専門的表現語彙が増加するのは当然とも考えられるが、より具体的にどのような語彙が増えるのかとのデータを把握することも大切とされている。これは、生徒に対するくすり教育の必要性を打ち出しても、肝心の生徒たちのくすりに対する認識が学年によってどのように変わっていくのかとの調査、研究がなければ一般的なくすり教育に終わってしまう可能性が高く、せっかくのくすり教育もあまり効率的なものにはならない可能性が高いからである。このような観点から行われたフィンランドでの調査では、例えば、7学年の生徒では食欲不振、偏頭痛、ストレスなどの高度な語彙が使われるようになっていることが分かる。しかし、くすりと病気が関係してくると、くすりの意味を理解することがかなり難しくなる場合もある。例えば、抗生物質は何に使われるのかとの質問には誰も答えられなかった。しかし、くすりと食事との関連についての質問、例えばくすりを食事と一緒に服用すると副作用を防ぐことができると答えたり、牛乳と一緒にくすりを服用してはいけないことを4学年の一部の生徒が知っていたりした。それぞれの学年グループでくすりの味がよいことが表現されていたが、これはシロップのことを意味しているものと思われた。



参考文献
◆Hämeen-Anttila K. et al. Patient Edu Couns 2006; 60(2) : 171-8
FIP Statement of Principle : the pharmacist's responsibility and role in teaching children and vvvadolescents about medicines(2001).

子供たちの知識を語彙ではかる、興味深い調査です。次回は引き続き同じ調査から、「くすりって何に使われるのだろうか」を紹介していきます。

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