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海外教育レポート

2008年3月1日

第14回 くすりの学校教育 海外レポート ~イタリア~

今回はドイツに引き続き、イタリアの現状をご報告します。この国の「くすり教育」は全国的に組織化された体系はなく、教育内容も各地区や学校によって異なりますが、どちらかというと社会問題となっている薬物に焦点が置かれています。注目されるのは、最近国立機関が特定のテーマに絞って、みんなが安心して使える教材の作成をしていることです。

たばこ、アルコール、覚せい剤にたばこ、アルコール、覚せい剤に焦点を当てた「くすり教育」
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二


 イタリアの学校での「くすり教育」は全国統一された組織体系にはなっておらず、個人単位、学校単位など、必要に応じて「くすり教育」がなされている。例えば、薬局の個人薬剤師が町の学校で2時間程度の「くすり教育」を行っているケースもあるが、定期的ではない。

 また、小中学校の健康教育プログラムの中での広義のくすり教育の内容はさまざまで、狭義の意味でのくすりの正しい使い方の教育と並んでアルコール飲料の害、タバコの健康に及ぼす影響などの項目が設けられている場合もある。例えば、同じ都市の一部の小学校ではアルコールとタバコなどの害の両方についての授業はみられるが、他の小学校ではくすりの正しい使い方の教育はなされていないこともある。その反対に、他の小学校ではくすりの正しい使い方の項目のみを教科の中に取り入れている地区もある。このように、くすりに関する教科内容についてはそれぞれの地域の教育委員会、学校当局の方針によって多少の変化がみられる。

国立機関が教材を作成

 イタリアには日本のような学校薬剤師制度はなく、町のロータリークラブの依頼を受けて薬局の薬剤師が高等学校で「くすり教育」を行っていることもある。ただ、「くすり教育」の内容は麻薬、覚せい剤など、薬物の危険性を生徒たちに認識してもらうという点に焦点が置かれており、その教材もまちまちで統一性のあるものではない。したがって当協議会が進めている一般的な意味での「くすり教育」の内容とは若干異なるかもしれない。もっとも日本でもこのような広義のくすりの観点からの学校教育は地域単位で個別的になされていることがあり、例えば、高等学校で警察署生活安全課の人が講師となって覚せい剤など薬物の危険性を生徒たちに知ってもらおうとする薬物乱用防止教室が開かれたりしている。

 イタリアでも最近は覚せい剤などをも含めた広義の意味でのくすり教育への関心は、社会的な問題もあって学校での教育が重視され始めている。その中でも注目されるのは、イタリアの国立高等衛生研究所(Istituto Superiore di Sanita`, Roma、日本の旧国立衛生試験所と旧国立公衆衛生院の両者を合わせたような組織)が特定のテーマでいろいろな教材を作成していることである。この研究所の医薬品部の中に「たばこ、アルコール、覚せい剤セクション」があり、このセクションが中心となっていろいろなキャンペーンを主催したり、それらに関連した教材を作成したりしている。例えば、15-19歳の青少年を対象とした全国規模での覚せい剤使用撲滅を目的としたプロジェクト(IN-DIPENDENTE)があり、教育資材を作成している。また、そのほかのプロジェクトとしては"中毒依存予防のための生活習慣"(Gli stili di vita per la preventione delle tossicodipendenza)を目標に掲げ、「たばこ、アルコール、覚せい剤」を対象とした資料が作成され、それぞれの目的に応じたキットが作成され、そのキットには小冊子、ビデオ、CDなどが含まれている。

【小冊子の例】

 
 いかがでしたか、国立機関がテーマを絞ってプロジェクトをつくり、教材を作成の上全国規模でのキャンペーンを主催する、そんなしっかりとしたサイクルができているようです。

 それでは次回は、ゲーム感覚でタバコの害を教える教材をご紹介します。
お楽しみにしてください。



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