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海外教育レポート

2007年12月1日

第11回 くすりの学校教育 海外レポート ~ドイツ~

今回は「痛み」をテーマにして、「自己管理」、「社会管理」、「問題管理」の3つの観点から、痛みそのものを理解し、その処置についての議論を進めながら、くすりのことも理解していく過程をご紹介していきます。


かなりの高学年まで念頭に置いたくすり教育プログラム
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二

 
3つの観点からくすり教育が進められる 

 この指導要領の特徴は、いきなりくすりが直接の対象として取り上げられるのではなく、くすりが使われる可能性のあるいろいろな環境、状態を「自己管理」(Selbstkompetenz)、「社会管理」(Sozialkompetenz)、「問題管理」(Sachkompetenz)の3つの視点から取り扱っていることである。
 このような進め方は今までのフランスや英国での考え方とは根本的に異なり、極めて興味深いものである。典型的なドイツ人の論理的な考え方が反映されているのかもしれない。例えば、5~6学年ではその対象が「痛み」、7~8学年が「ストレス」、9~10学年が「体力向上」が主要テーマとなっており、それぞれの話題の中でくすりが登場する。
 今回は1つの例として「痛み」のテーマを取り上げて、それぞれの自己管理、社会管理、問題管理についてどのような解説がされているのかを紹介する。

5~6学年の「痛み」がテーマの場合の授業内容

 痛みそのものの理解(自己管理)から始まって、くすり全体から、リスクとか副作用などについての情報、宣伝(社会管理)についての理解、そして最後には痛みそのものへの処置(問題管理)について議論、理解するようになっている。
(1)最初に、痛み全般の知識、理解として、
   a) 痛みとはいったいなんなのだろうか
   b) 痛みにはいろいろな種類があるのだろうか
   c) 痛みの原因はなんなのだろうか
   d) 痛みに対してどのように対処したらよいのだろうか
   これらの問いに対して(2)~(4)の7つの項目をいろいろな観点から討議して、間接的にくすりの理解を進めていくようになっている。
(2)自己管理項目として、
   1)痛みが取り除かれることは小さな魔術みたいである
   2)どの程度痛みに耐えられるだろうか
   3)実際にどんなときに痛みを経験するのだろうか
(3)社会管理項目として、
   4)いろいろな痛みに対してどのような対処方法があるのだろうか
   5)痛みに対するいろいろなくすりについて理解を深めてみよう
(4)問題管理項目として、
   6)咳をしたりくしゃみなどから風邪をひいたりするときの注意点、風邪の範疇内での痛みを取り除くにはどうしたらよいか
   7)軽い痛みから激しい痛みに対する理解とその意義

 これらの項目を念頭に置いて、取り上げるテーマによっても異なるが、大体5時間から10時間前後の授業が組まれることが望ましいとされている。ここで特徴のあることは最初に先生がいろいろな状況を解説、説明し、その後に生徒たちにいろいろなテーマを出して、各個人あるいはグループでの討議がなされていることである。
 次号では実際に先生がどのような説明をし、それに対してどのようなテーマを生徒に出しているのかの実際例について紹介する。

参考資料 Bundeszentrale fuer gesundheitliche Aufkaerung:
       Gesundheit und Schule/Arzneimittel
       a) Materialien fuer die Grundshcule 1.-4. Klasse(Koeln, 1996)
       b) Materialien in den Klassen 5-10(Koeln, 1998)


 いかがでしたか、単にくすりの使用方法にとどまらず、くすりを自分自身の問題として捉え、それを社会的な視点にまで敷衍していくはやり方は、これまで紹介してきた他の国とは多少異にしているようです。次回はより具体的なくすり教育の例をご紹介したいと思います。
ご期待ください。



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