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海外教育レポート

2007年11月1日

第10回 くすりの学校教育 海外レポート ~ドイツ~

フランス、イギリスとヨーロッパにおけるくすり教育の現状を述べてきましたが、今回は同じヨーロッパでも、ドイツの例をご紹介します。ドイツは国の厚生当局が現場の教師向けに指導要領を作成するが、それを活用するかどうかは学校当局にまかされているなど、イギリスに比べて学校の自由度が高い分だけ、一貫性に欠けるようです。
今回は、その辺りの実状をご報告します。

かなりの高学年まで念頭に置いたくすり教育プログラム

               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二
 

 ドイツでは1990年代に厚生省の健康促進教育局(Bundesministeriums fuer Gesundheit und Soziale Sicherung)によって作成された「健康と学校教育」に、くすりをテーマにした資料が含まれている。この資料は指導要領のような性格のもので、従ってその対象はあくまでも教師となっており、その記述内容はかなり専門的になっている。しかも、その対象学年は1学年から10学年とかなり広範囲の学生を念頭においたプログラムが組まれている。ただ、ドイツの場合にはフランスや英国の場合とは異なり、かなり高学年に至るまでのくすり教育が念頭に置かれているので、当然ながら医療用のくすりも対象となっており、例えば高学年向けの指導要領の中には、医薬品開発の過程の解説とか医薬品剤形の解説などが見られ、さらに高学年になるとドーピングの問題にも触れていて、その内容はかなり専門的な領域にまで踏み込んでいるのが特徴である。

必ずしも全国的に一貫して行われるわけではない 

 これらの指導要領は厚生当局が現場の教師のために参考となるような資料であり、実際にくすり教育として実施するに際しては各州、各都市の担当部門がその採否、実施の時期などを決めることができるようになっていて、必ずしも全国的な活動目標にはなっていないことである。つまり、行政はあくまでもいろいろな可能性を指導要領の形で提供し、実際にそれを活用するかしないかは学校当局の担当教師に任されている。
 従って、くすり教育に関しては一貫性、連続性、キャンペーン性、全国共通性、同時実施性などの要素は見られず、フランスや英国と比べるといささか異なっている点である。なお、現実にはこの指導要領が作成されてからすでに10年近くが経過しているので、すべての学校で実際にこの指導要領が現在でも活用されているかというと、ほとんど忘れ去られているのが実情である。

同学年でも同一年齢とはならないドイツの学制

 ドイツの学制は、小学校が4年間で、その後は中学校ないしギムナジウムに進学するが、州によっても制度が若干異なるので、小学校入学児の年令は5~7歳とある程度の幅がある。
 従って、上記の指導要領は二部に分かれていて、最初のものは小学校児童を対象にしているので、学年別では1~4学年向けとなっている。したがって、小学校を卒業後以降は5学年から始まることになる。つまり小学校を卒業して中学校ないしギムナジウムに入った時点が5学年(5.Klasse)になる。
 5学年とか、6学年という表現を使っているのは必ずしも同じ学年でも同一年齢ではないこと、小学校卒業後の学制もいろいろと種類があるので、教育対象児童は「学年」に統一されているためである。従って、10学年は日本の学制から理解すると16歳前後、つまり高校生の一部までに該当する。
今回ここに紹介できる指導要領の二部では、5学年から10学年に対するくすり教育になる。この資料では1学年から4学年までとは異なって、そのカリキュラム内容はかなり多彩な面にまで言及されている。


 いかがでしたか、日本とは学制が異なりピントこない方もいらっしゃるかも知れませんが、次回は、くすりを直接の対象にするのではなく、くすりが使われる環境や状態から学んでいくなど、いかにもドイツ人らしい論理的な考えに基づく独特な教育方法をご紹介していきます。


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