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海外教育レポート

2007年8月1日

第7回 くすりの学校教育 海外レポート ~イギリス~

今回も引き続きイギリスの現状をご報告します。
この国では、教師用のくすり情報小冊子が配布され、その記述内容は、使用実態をはじめ医薬品の基礎知識や薬品関連法規、処方箋の乱用にいたるまで言及され、またそれがどのように活用されているかも紹介されています。授業を進める上でも、参考になる点が多々ありますので是非ご参考にしてください。

薬物乱用も含めた総合的なくすり(drugs)教育に取り組む
-義務教育期間中は、継続してカリキュラムを設定-
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二


薬物乱用の問題点を討論させる

 イギリスの教師用のくすり情報小冊子には、最近の学校内での「くすり」使用実態、医薬品関連の法規の解説、医薬品の基礎知識(分類)が記述されている。その中で処方薬の乱用についても言及され、アンフェタミン、コカイン、リタリン、ベンゾジアゼピン類などが解説されていることからも、学校内で「くすり」が乱用されるケースがかなり高いことがうかがわれる。

 そのくすり情報小冊子には各学年の教育内容も明確にされている。例えば7学年(11−12才)の学童の場合、「くすり」についての情報、知識を日常生活の中でどのようにして知るのか、「くすり」にはどういう種類がありどういった効果があるのか、「くすり」の意味をあらためて考え、討論、理解するようになっている。

 クラス討論のテーマとして、「どうして一部の友だちがそのような「くすり」を使うようになるのだろうか」というものがある。そこではアルコール飲料、タバコ、大麻、医薬品の使用が念頭に置かれている。クラス全員が、なぜそうした「くすり」を使いはじめるようになったのか、またどうしてそれらの「くすり」の使用をやめられないのかを5分間でまとめる作業を行い、そしてそのことについて、自分の健康、勉強、友人関係、家庭などにどのような影響を及ぼすことになるのかといったことも含め、討論することになっている。

学校・家庭・社会福祉関係者との連携を

 「くすり教育」を担当する学校の先生は、行政当局が指定する所定の機関で教育を受ける必要がある。また教育実施にあたっては、参考になる「指針」が設定されており、これに基づいて、学校単位で「くすり教育」のポリシーを設定することが求められている。この指針は数年間隔で改定されている。
 この「くすり教育」の成果をより一層高めるためには学校と学童家庭との密接な交流、協力が不可欠であり、それに際して以下のことが必要とされている。

1.「くすり教育」が学校教育の中で占める重要性を認識してもらうこと
2.「くすり教育」の内容について説明し、理解を求めること
3.「くすり教育」に関与している学童の両親や社会福祉関係者との連携を深めること
4.「くすり教育」に各家庭内の協力を求めること
5.両親ならびに社会福祉関係者との話し合いを持ち、「くすり教育」の内容を検討し、改善を模索すること

 なお、この「くすり教育」には直接関係ないが、学校内で医療用医薬品を定期的に服用しなければならない学童に対するガイドラインが設定されている。教師がその投薬状況を把握し、記録する制度が同時になされていることは、われわれにとっても参考になるのではないだろうか。この場合、drugsという用語は使われず“medicines”が使われている。言葉の明確な使い分けがなされている。

参考資料
1) Guidelines for the Delivery of Drug Education in Schools (The city of Edinburgh Council, 2001)
2) Understanding drugs; Teacher’s guide for key stage 3 (Department for education and skills, 2006)
3) Drugs: Guidance for Schools (Department for education and skills, 2004)
4) Managing Medicines in Schools and Early Years Settings (Department of Health, 2005)

 やはり「くすり教育」は、学校だけの問題ではなく、学童やその保護者との密接なコミュニケーションを図り、かつ教師自らが学校でのその児童の服薬状況を把握するなど、学童に対する直截的な教育だけではうまく機能しないのかも知れません。また、学校現場では、“drugs”と治療に必要な“medicines”を明確に使い分けしていることも参考になりました。では次回も引き続きイギリスのお話をしますが、トランプ式カードを使用したちょっとユニークな教材の例もご紹介しようと思っておりますので、ご期待ください。

参考資料3) 『Drugs: Guidance for Schools』


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