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海外教育レポート

2007年7月1日

第6回 くすりの学校教育 海外レポート ~イギリス~

今回は、イギリスのくすり教育の現状をお伝えしたいと思います。1990年の若者たちの薬物乱用が社会問題となり、健全な学校環境全国運動の一環として、くすり教育が始められたいきさつやその教育内容をご紹介していきます。

薬物乱用も含めた総合的なくすり(drugs)教育に取り組む
-義務教育期間中は、継続してカリキュラムを設定-
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二


イギリスでは1990年代前半に、若者たちの薬物の乱用がかなり社会問題となり、学校教育に「くすり」の教育を取り入れることが検討されはじめた。その結果としてイギリスでは「くすり教育」は義務制となり、小学校から開始され、義務教育期間中は一定のカリキュラムに基づいて実施されるようになった。
もっともこの義務制は法的な規制を示すものではなく、あるべき姿と理解されている。ここでいう「義務」(statutory requirement)は、日本の「通達」に該当するものと考えられる。しかし実際には、全国的に1995年の8月からスタートし、今日にいたるまで継続して実施されている。

健全な学校環境整備を補佐

 2004年になってから健全な学校環境全国運動(National Healthy School Status)が提唱され、2009年までにイギリスのすべての学校でこの運動が実施されることが計画されている。この計画には次の4項目の目標が設定されており、「くすり教育」もこの運動を間接的に補佐する役割として認識され、採用されている。

1.学童、青少年の健全な姿の育成に寄与すること
2.その目的のために周囲の人たちの協力を助成すること
3.健全状態の不均衡をなくすこと
4.社会全体のコンセンサスを育成すること

 「くすり教育」の「くすり」は、原語(英語)では“drugs”が使われている。drugsの意味には、医薬品(OTC薬、処方薬を含む)、アルコール飲料、タバコ、覚せい剤、麻薬、シンナ―などすべてが含まれる。イギリスの「くすり教育」の対象が単なる医薬品に限定されず、こうした広範囲にわたっていることは、イギリスの社会情勢を間接的に反映しているものといえよう。

学年ごとに教育内容は明確に区分

 この「くすり教育」は、「人、社会、健康教育、市民」という教科の中で組み入れられており、その対象区分および教育内容は以下のようになっている。

◆5−7才学童(Key stage1):「くすり」の中の医薬品について、役割ならびに正しく使われることの意義について学習
◆7−11才学童(Key stage2):タバコ、アルコール飲料などを含めた「くすり」について、どのような害があるか、またどの「くすり」が違法かを学習
◆11−14才学童(Key stage3):アルコール飲料、タバコ、覚せい剤などを含めた「くすり」がいかに健康を害するか、体の免疫機構の役割、タバコの肺への影響など、また「くすり」に関連した規則、法律などを学習
◆14−16才学童(Key stage4):タバコ、アルコール飲料ならびにそのほかの「くすり」の身体機能への作用を学習     

 このように、イギリスの「くすり教育」は学年ごとにその教育内容が明確に区分されており、当協議会が日本における「くすり教育」として考えている一般的な医薬品だけについての教育とはかなり異なっている。一般的な医薬品(狭義の意味での「くすり」)についてはKey stage1の学童に対してなされ、それ以降はアルコール飲料、タバコ、覚せい剤など、広い範囲で言及しているのが特徴的である。どちらかというと、全体的に「くすり」の誤用、乱用の影響に焦点が当てられた内容だ。

 いかがでしたか、学校では、明確な4つの目標を設定し、学年を4段階に分け、初歩的なくすりの正しい使い方から、学年が上がるごとに、その内容はアルコール飲料やタバコ、覚せい剤など薬物の乱用を含め、幅広く教えられています。またくすりの健康に対する害や法律的な規制など、社会的な側面も加味された学習内容になっています。
 次回は、「くすり教育」を担当する教師は、行政当局による教育を受ける必要があることや学校単位でのポリシーの設定、学校と学童をとりまく家庭や社会福祉関係者との連携の重要性についてご紹介していきます。次回もお楽しみにしてください。


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