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海外教育レポート

2007年6月1日

第5回 くすりの学校教育 海外レポート ~フランス~

今回は、先月に引き続きフランスのくすり教育を中心にご報告します。

小学生ではかなり参考になる教材もあるが、 まだまだ解決すべき問題点も残る、 フランスの「くすり教育」

               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二


キャンぺーンは、生徒にはおおむね好評だった

 このキャンペーンはいずれも教職員の自由意思に基づくボランティア活動である。従って、フランスのすべての学校でこのキャンペーンが受け入れられていたわけではなかった。またこのキャンペーンが、その後も継続して行われたわけでもない。

 キャンペーン終了後の「くすり教育」継続は、各教師の自由意思に任されている。もちろんこのキャンペーンに使用した教材は学校に残っており、教師の関心があれば教育を継続することは可能である。ただ現在、どのくらいの学校で継続されているのか、どういった状況にあるのかは不明である。南フランスの小学校の教師に聞いてみたが、その学校では「くすり教育」は現在実施されていないとのことだった。

 99年の「総合検討討論会」では高学年の生徒も招待され、いろいろな経験、データが提供されていた。生徒の評価はおおむね良好だが、高学年では全体に密度の高い教育プログラムの中から、このような教育に時間を割くことがかなり難しいことが現場の教師から指摘があった。

 またこの授業を行うのは教師であり、内容専門外ということもあって、特に高学年になればその教育内容の理解に困難が伴うことも指摘された。
このフランスの「くすり教育」を要約すると以下のようになる。

 1)教育が低学年から高学年へと年度順に導入され、全学年一斉には行われなかった。おそらく教材が低学年から順番に作成されていったためだろう。また小学校では5年間にわたってこのキャンペーンが継続していたので、対象児童はかなりの数に上っている。

 2)任意団体が音頭をとって施行したもので、行政が関係したものではなかった。従って規制力もなく、実施するかは現場の教師の判断に委ねられていた。また正規の授業ではないので、ボランティアであった。残念ながら、行政当局はこのキャンペーンにあまり大きな関心を示さなかったようである。

 3)あくまでもキャンペーンとしての運動(一時的なもの)だったため、2000年に入ってからは、少なくとも小学校、コレージュでは行われていないようだ。

 4)教材の中にはユニークなものもあり、今後日本で検討していく上で大いに参考になる。

 5)キャンペーン(授業)を実際に担当するのは現場の教師であり、内容が専門外となることが問題となった。薬剤師や保健婦のような専門家の起用あるいは協力を検討する必要があるかもしれない。

「くすりのこと知っていますか」キャンペーン(フランス)

(1)1992年 製薬団体、消費者団体、医歯薬連合の三者合同の協議会が、学校教育キャンペーン実施計画を検討。
(2)1993年 ワーキンググループを結成。薬剤師会および国立保健・医学研究所と協力して教材、カリキュラムなどを作成。
(3)1994~1998年 小学校の上級2学年CM1(9才児)、CM2(10才児)からキャンペーン開始。全国の70%に該当する35,000のCM1・CM2クラスで授業が行われた(約3百万人の児童が授業を受けた)。《第一次キャンペーン》
(4)1997~1998年 前期中等教育のコレージュ(11~14才)で開始。自然科学系教師の約90%(14,000人)が参加。12,500の教材を希望者に配布。              
(5)1998~1999年 後期中等教育のリセ(15~18才)で開始。
担当教師(社会・経済系)の23%に相当する8,500人が参加。《第三次キャンペーン》

 いかがでしたか、くすり教育に熱心だと思われていたフランスでも多くの問題を抱えていることが分かりました。密度の高い教育プログラムを抱えた高学年に対し、どうやってくすり教育の時間を確保するのか、専門外の教師が高度な教育内容をいかに理解するのか。
 また、いかに行政当局を巻き込み、息の長いキャンペーンにして行くのか、これらは日本のくすり教育にも通じるものが多々あります。
 私ども「くすりの適正使用協議会」におきましても、これらの活動を参考に、より良いくすり教育を続けていきたいと思っております。

次回は、イギリスのくすり教育を中心にご報告したいと思います。



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