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海外教育レポート

2007年5月1日

第4回 くすりの学校教育 海外レポート ~フランス~

今回は、ヨーロッパの国々の中で、くすりの消費量が最も多いフランスの事情をご報告します。国の関与はなく、製薬連合、消費者団体、医歯薬連合会の三者合同の協議会が中心となって、すでに20年以上にわたって「くすりの適正使用」の必要性が検討されてきました。その一環としての学校教育を2回にわたりご報告します。

小学生ではかなり参考になる教材もあるが、 まだまだ解決すべき問題点も残る、フランスの「くすり教育」
               くすりの適正使用協議会海外情報コーディネーター 鈴木 伸二

フランスの学校におけるくすり教育については1999(平成11)年に、「フランスの小中高三段階における薬の正しい使い方教育」として、徳島で開催された日本薬学会大会でその報告がされている(※1)。その発表以来、この課題に対する関心が高まっているようだ。本協議会の「児童向けくすり教育」の研究、開発および推進活動への契機ともなっている。

民間の協議会が、学校教育キャンペーンを実施

 フランス人は比較的くすりの使用が日常的で、従って欧州の中でもくすり全体の消費量は最大である。2000年当時でも、一人当たりの医薬品購入費はドイツ、イギリスよりも多く、欧州諸国のトップである。特に抗生物質やトランキライザーなどの使用は乱用に近い状態だという。

 そのためフランスでは、以前より医薬品使用に関する医療費問題、社会的問題、経済的問題などが指摘され、それぞれの問題点が議論されていた。医薬品の正しい使用を念頭に置いた検討もなされている。つまり、一般患者のくすりに対する正しい理解を啓発する必要性が、フランスでは認識されているのだ。

 このような環境下にあって、フランスの製薬団体(Industrie du Medicament)、消費者団体(Organisations de Consommateurs)、医歯薬連合(Syndicats de Medecins et de Pharmaciens)の三者合同の協議会が中心となり、90年代、すでに過去20年以上にわたって「くすりの適正使用」の必要性が検討されていた。その一環として、学校でもくすりについて授業を行うべきとの結論に達し、92年には1年をかけて「くすりのことを知っていますか(Bon Usage du Medicament)」キャンペーン実施の計画が検討された。その後、実行のためのワーキンググループが組織され、薬剤師会と国立保健・医学研究所の協力を得て教材、カリキュラムなどを作成した。

こうして「くすりのことを知っていますか」の全国規模のキャンペーンの準備が整っていったのである。

小学校では、 全国の70%の学校が導入

 94年から98年にかけ、「くすりのことを知っていますか」の第一次キャンペーンが、小学校の上級2学年CM1(9才児)、CM2(10才児)を対象にスタートした。この5年間のキャンペーン期間を通じ、フランス国内の小学校の70%に該当する35,000のCM1・CM2クラスで、「くすりのことを知っていますか」の授業が行われた。合計で約3百万人の児童がこの授業を受けたとされる。

 第二次キャンペーンは97年~98年。前期中等教育のコレージュ(日本の中学校/11~14才)で、同趣旨の「くすりのことを知っていますか」の授業が行われた。この時は、自然科学系教師の約90%に相当する 14,000人が自発的にこのキャンペーンに参加を申し込み、12,500の教材が希望者に配布された。

 第三次キャンペーンは後期中等教育のリセ(日本の高校/15~18才)で、98年末から開始された。担当教師(社会・経済系)の23%に相当する8,500人から、この第三次キャンペーンへの参加応募があった。

 99年1月には、このキャンペーンの成果を評価、検討するラウンドテーブル討論を中心とした「総合検討討論会」(Colloque organise a la Domus Medica, le 27 janvier 1999)が開かれ、その成果が公表されている(※2)。

 この「くすり教育」の授業内容については、すでに詳細な報告が公表(※1)されているので本稿では省略するが、各学年によってその内容がそれぞれ異なった項目で構成されているのは当然である。低学年では病気とくすりのかかわり、くすりの目的や薬剤師、医師の役割などについて、コミックなどを利用して説明している。中学年では日常的な疾患に用いられる医薬品に言及し、その使い方などを述べている。さらに高学年では、くすりの社会的意義、くすりの歴史、くすりの正しい使い方などがビデオなどを使って説明される。

 通常この「くすり教育」は、授業ならびに討論を含めて約3時間前後となっていた。確かにこのフランスでの試みには、小学校でコミックなどを使うなどのユニークな部分も見られ、かなり参考になるものがある。

いかがでしたか、学年ごとに教える教師の担当教科が違ったり、低学年にはコミックを取り入れるなど、学年が上がるごとに使用される教材にも、いろいろと工夫がなされていることがよく分かりました。次回は、教師のボランティア活動としての限界や、教育現場が抱える問題点を報告してもらいます。次回のくすり教育レポートをお楽しみにしてください。

参考資料

※1 竹中祐典「薬の正しい使い方―フランス学校教育における試み」 The informed prescriber Vol.14, No.4, 43 (1999)
※2 「Bon Usage du Medicament, Responsabilite Individuelle et Collective」 Edition John Libbey Eurotext (1999)

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